第2回DM東海CS 準決勝

S.S(愛知県) vs りゅーてぃ(関東地方)

Writer: バートレット



2019年10月7日。

前日に行われたデュエル・マスターズグランプリ9thの熱気冷めやらぬ中、ここ静岡県には、戦いの熱に未だ飢えた猛者たちが集まっていた。

それこそが第2回DM東海CSだ。

運営母体は今や伝説として語り継がれるTeam静岡CS。彼らもまた、静岡CSの熱気を忘れられないばかりに、再び256名規模のCSを開催するに至ったのだ。

そう、この日、まさに静岡は熱に浮かされた者たちが一点集中する異常事態。その共通認識はこの一言に収束する。

 

「俺たちの祭りは、俺達の戦いは終わっちゃいねぇ」と。

 

そんな猛者256名の中から、この日一番強い者を決める戦いは、今や4人に絞られた。

何を隠そう、このカバレージを書く筆者も勝負の熱に飢えた大馬鹿野郎だ。そして、筆者はこ

「熱」を永遠に記録するためにここにいる。

 

そして、筆者の目の前には、長丁場を戦い抜いてきた2人の男がいる。

 

一人はS.S。

愛知を拠点に活動するプレイヤーだ。

特筆すべきは本日の戦績。予選7ラウンドを全て勝利して1位で通過。決勝ラウンドも、なんと1ゲームたりとも負けていない状況だ。間違いなく、この日最も頂点に近いところにいる若き侍。

 

いま一人はりゅーてぃ。

東京で活動する古株のプレイヤーで、長年の経験に裏打ちされたその環境分析能力と適応力はプロプレイヤーにも引けを取らない。経験と知識を武器に戦う、今この場において軍師とはまさにこの男のことを指す。

 

侍と軍師の一騎打ち。さぁ、この大いなる戦場の只中に飛び込むとしよう。

 

1本目、予選順位の高いS.S.が先攻。

互いの初手、マナに置いたカードはS.Sが《メガ・マナロック・ドラゴン》、りゅーてぃが《バロン・ゴーヤマ》だ。

 

続くS.Sの第2ターン、S.S.は《光牙忍ハヤブサマル》をマナゾーンに置く。2枚の殿堂入りカードをマナゾーンに送り込んだS.S。しかし、この対面において、今マナに置いた2枚は無用の長物なのだ。

 

りゅーてぃがこの日持ち込んだデッキは【野菜ネイチャーミッツァイル】。《BAKUOOON・ミッツァイル》を使用するデッキの中では珍しく、ループ系のデッキである。つまり、この対面においてマナをほとんど縛ることができない《メガ・マナロック・ドラゴン》と、ビートダウン以外の相手には仕事がない《光牙忍ハヤブサマル》は早々にマナに置くしかない。裏を返せば、仕事が期待できない2枚を引き込んでしまっていることになる。S.Sの表情はやや浮かない。

 

一方のりゅーてぃの第2ターン、《レッツ・ゴイチゴ》で先んじてマナを3に伸ばす。次のターンにさらなるアクションを仕掛けられる状況。なんとしてでも主導権をこのまま握っていきたいところだ。

 

さらにりゅーてぃは、第3ターンで《カラフル・ナスオ》をプレイ。マナが大きく入れ替わり、《バングリッドX7》3枚を含む4枚のカードが墓地に送られる。そしてマナには《バロン・ゴーヤマ》、《ラ・ズーネヨマ・パンツァー》、《カラフル・ナスオ》、そして《生命と大地と轟破の決断》。ここまではりゅーてぃのペースでゲームが動いている。

 

次のターン、《侵革目パラスラプト》のプレイを許すと、いよいよこのゲームを支配下に置く者がりゅーてぃとなるだろう。S.Sは思わず頭を抱えた。なんとしてでも流れを自分に引き寄せなければ。

 

S.S、逡巡の末、ついに第4ターンの自分の行動方針を固めた。まずはクリーチャーの展開をしなければ何も始まらない、と。4マナを使用して登場したのは《DROROOON・バックラスター》。GR召喚によって《マリゴルドIII》が戦場に送り込まれる。GRクリーチャーが出たことによる《DROROOON・バックラスター》の誘発効果によるバトルで《カラフル・ナスオ》は葬られ、S.Sの反撃の狼煙が上がる。

 

りゅーてぃの第5ターン、ドロー後の顔が険しい。流れが変わりつつあることを感じ取っていたのか。

 

何度か場の状況と手札を見比べて、《霞み妖精ジャスミン》でマナを伸ばした後、4枚目の《バングリッドX7》が盤面に送り出される。彼の目的は唯一つ、クリーチャーを減らすことだ。S.Sのデッキは【緑赤青ミッツァイル】。クリーチャーを複数体場に残しておけば、それだけ自分の死期が早まる結果となる。

 

だが、《DROROOON・バックラスター》は倒すことができない。素のパワーこそ4000だが、バトル中にパワーが2000上昇する効果を持っている。《バングリッドX7》のパワーは4000。これでは処理できない。

 

意を決して《マリゴルドIII》へアタックを仕掛ける。そしてアタックトリガーで1ブースト。これでマナは7まで伸びる。殴り返しかGR召喚一発でこの《バングリッドX7》は亡き者にされるだろう。だが、裏を返せば、《侵革目 パラスラプト》でブーストできるマナが増えることにも繋がる。あと一歩だ。あと一歩を目指すしか無い。

 

と、ここで第5ターンを迎えたS.Sが青を含むマナを3つ倒す。それを見たりゅーてぃにとって、この後投下されるカードを言い当てることは簡単だった。S.Sが手にかけたカードがテーブルの上に着地する直前、思わずりゅーてぃは聞いていた。

 

「(番号の宣言は)なんぼですか……?」

 

その食い気味の反応にS.Sは「早いっすねぇ」と苦笑する。りゅーてぃが察したとおり、S.Sが出したのは《本日のラッキーナンバー!》だ。番号の宣言は5。これでりゅーてぃは5コストのクリーチャーの召喚、呪文の行使を封じられる。《DROROOON・バックラスター》がりゅーてぃの《バングリッドX7》を一方的に討ち取っていく。

 

軍師・りゅーてぃには先を見通す力がある。だが、見通しただけでは状況を打破できない。すでに策の一端は先んじて封じられた。ゲームの主導権はS.Sが一瞬で掻っ攫っていってしまったのだ。

 

なすすべなく《生命と大地と轟破の決断》をマナに置いてターンはS.Sへ。流れを掌握したS.S、ここは主導権を離すことなく引導を渡したい。5マナを倒して召喚されるのは《Wave ウェイブ》。墓地の呪文を再度行使できる。唱えられたのは《本日のラッキーナンバー!》。宣言は再びの5だ。

 

「やりすぎィ!!」

 

りゅーてぃは悲鳴を上げる。さらに呪文を唱えたことで《Waveウェイブ》の効果が誘発しGR召喚。登場したのは《ダダダチッコ・ダッチー》。マナドライブ能力の条件は達成しており、デッキトップのカードがコスト6以下ならばそれを踏み倒せる。

そして、そのカードを見た瞬間、その場にいた全員が凍りついた。

 

「あっ……!?」

 

S.Sはそのカードを手に目を丸くする。

 

「え、えっ、えぇっ……!?」

 

りゅーてぃ、思わず身を乗り出して見間違いでないかを確認する。

 

観戦していたギャラリーが、戦いの様子を見守っていたジャッジが、そして状況を記録していた筆者ですら、その瞬間、そのカードを食い入るように見つめていた。

 

突然呼び出され、主を含めた全員から注目を浴びて、カードイラストの中の彼女はこころなしか、「出てきちゃマズかった……?」と言わんばかりの怪訝な表情をしているように見えた。

 

否、S.Sにとっては予定外の福音である。残るマナは赤い1枚。そのまま《BAKUOOON・ミッツァイル》を出せば、今出てきた彼女の力で労せずりゅーてぃにトドメを刺せるのだから。

 

予定外の福音はゲーム終了の鐘を鳴らしたも同然だった。その鐘の撞き手はただ一人。

 

《音精ラフルル》。

 

S.S、決勝への切符に王手をかけた。

 

S.S 1-0 りゅーてぃ

 

「や、やったー……!」

 

「やったーじゃないよ……『あっ』じゃないよ……まぁあれ(ラフルル)なくてもキツかったけどね」

 

明と暗。1本目が終わり、2本目のための準備を行う中で、両者が纏う雰囲気は対象的であった。

突然もたらされた勝利への道筋を駆け抜けた若侍S.S。

急転直下、いきなり全ての希望を打ち砕かれた軍師りゅーてぃ。

それでも、まだ勝負は終わらない。この準決勝は2本先取のマッチ戦だからだ。

りゅーてぃが2本目をものにした瞬間、全ての命運を決める3本目へともつれ込む。

 

だが、この時、先程の光景を目の当たりにした筆者は薄ら寒さを覚えていた。

 

思い起こせばかつてこの地、まさにこの会場である藤枝文化センターでは、幾多もの熱き戦いが繰り広げられた大型CS、「静岡CS」が開催されていた。

だが、同時に。

この静岡CSは、「魔物」に魅入られたCSでもあったのだ。

全てをひっくり返した地獄門。世界で一番熱いじゃんけんゲーム。メタゲーム完全無視のマッチアップ。山から降りてきた化け物。天から舞い落ちるシールド。全ての明暗を分かつハンデス。全国覇者2人をして絶句させたメガランデス。決定的な盤面を全て崩壊させたたった1枚の《オリオティス・ジャッジ》。

ありえないどんでん返し、ぶっ飛んだ試合運び。それらを評して静岡には魔物が棲むと人は噂する。

 

そして、今この東海CSでもまた、筆者は感じ取っていた。眠っていた静岡に潜む魔物が、DMGP9thという大舞台を終えてなお勝負の熱に飢えたデュエリストたちの、集合無意識によって、再び目覚めたその気配を。

 

果たして、2本目は始まる。

目覚めた魔物に今再び魅入られた東海CS準決勝、その2本目が。

 

2本目は「負け先」ルールにより、りゅーてぃが先攻となる。

もはや後のないりゅーてぃ、第2ターンまでに《侵革目パラスラプト》2枚がマナに置かれ、《霞み妖精ジャスミン》でマナを3に伸ばす。

一方のS.Sも同じく第2ターンに《霞み妖精ジャスミン》。こちらもマナは3に伸びる。

S.Sとしては、なんとしても序盤のマナブースト勝負では食らいついていきたいところだ。1本目は結果として勝ちを拾えたものの、マナブーストは一切行うことができなかった。最終的に《今日のラッキーナンバー!》で決定的な動きこそ封じていたものの、序盤は確かにりゅーてぃがゲームの主導権を握っていた。それがマナブーストの有無にあったことは疑いようがない。

 

そして迎えたりゅーてぃの第3ターン、1本目と同様に《カラフル・ナスオ》が着地。マナに4枚置かれたカードを見て、どのマナを墓地に落とすかしばし熟考する。ここでめくられた4枚は全て緑のクリーチャーであり、《侵革目パラスラプト》はマナに2枚用意されている。次のターン、《生命と大地と轟破の決断》で動くことは十分に可能な状況だ。《カラフル・ナスオ》で一旦場に置かれた4枚のマナ全てが墓地に置かれる。

 

続くS.Sの第3ターン。ここまで赤のカードが見えていない状況だ。《本日のラッキーナンバー!》があれば使用タイミングはここだが、どうやらまだ引けていない様子。こちらも熟考の末に《DROROOON・バックラスター》をマナに置き、《知識と流転と時空の決断》をプレイ。効果選択は2回ともドローに回す。

 

りゅーてぃの第4ターン、この機を逃すかとばかりに《生命と大地と轟破の決断》をマナチャージ。さらに手札に抱えていた2枚目の《生命と大地と轟破の決断》をキャスト。マナから飛び出すのは《バロン・ゴーヤマ》と《侵革目パラスラプト》だ。《バロン・ゴーヤマ》の山札からカードを1枚選んでマナゾーンに置く効果を利用して山札の中を全て確認し、シールドに落ちたパーツを把握する。

 

そのまま《カラフル・ナスオ》をマナに置き、入れ替わるようにマナからクリーチャーを墓地に送る。さらに《カラフル・ナスオ》の効果で4枚をマナゾーンにタップイン、4体のクリーチャーをマナから墓地へ。《侵革目パラスラプト》の効果がここで解決され、墓地に落とされた緑のクリーチャーたちは一斉にマナゾーンに舞い戻る。もちろんアンタップ状態でだ。

 

大量のマナを得たりゅーてぃは2回目の《生命と大地と轟破の決断》。今度は《バロン・ゴーヤマ》と《カラフル・ナスオ》をバトルゾーンに送り込む。《バロン・ゴーヤマ》が送り込むのは《ダンディ・ナスオ》。展開に必要なパーツをマナへと送り込み、クリーチャーを墓地に送る。さらに《カラフル・ナスオ》が墓地にクリーチャーを増やし、再び墓地にクリーチャーは6枚。

 

3枚目の《生命と大地と轟破の決断》をマナからキャスト。今度は《侵革目パラスラプト》と《バロン・ゴーヤマ》。着々とクリーチャーが増えてはいるものの、決め手が足りないようだ。そう、ここまでの展開で《バングリッドX7》の姿がバトルゾーンになく、アンタップマナに《BAKUOOON・ミッツァイル》の姿もない。【野菜ネイチャーミッツァイル】の要であるこの2枚が来ない限り、相手を倒すことができない。りゅーてぃは目に見えて焦っていた。

 

そして、その焦りがりゅーてぃのプレイングに影響を始める。あるいは徐々に忍び寄る、静岡の魔物が思考を喰らい始めたのか。

 

りゅーてぃはこの3回目の《バロン・ゴーヤマ》の効果を解決するにあたって、マナに何を置くべきか、そして何を出すべきなのか、決定的な判断ミスを犯してしまったのだ。

《バロン・ゴーヤマ》の効果で山札からマナを経由して飛び出したのは《ノーダンディ・ネギオ》。その効果はマナゾーンから山札の上へカードを置き、然る後に墓地からマナへカードを送り込む効果。だがりゅーてぃは、歴戦の軍師は、あろうことか、その順番を取り違えてしまったのだ。

ジャッジからの指摘が入り、先に山札にマナゾーンのカードを置き、墓地からマナへカードを置く正しい順番で効果を解決するよう促される。りゅーてぃ、ここで自分が判断を誤ったことに気づいた。そもそもこのタイミングで《ノーダンディ・ネギオ》を出すべきではなかった、ということに。

弘法も筆の誤り、と人は言う。静岡の魔物に魅入られた彼を誰が責められようか。

魔物は、それだけ御するのが難しいのだ。

 

この痛恨のミスにより、追加の行動を行う手立てを失ってしまったりゅーてぃ。無情にもターンはS.Sに渡ってしまった。思わぬ形で1ターンの猶予を貰ってしまったS.Sだが、眼前には大量のりゅーてぃのクリーチャーがひしめいている。《鼓動する石版》でマナを増やすが、これは多色マナ。タップインとなる。だが、《本日のラッキーナンバー!》を続けてキャストした。宣言はもちろん5。りゅーてぃ、万事休すか。

 

そして迎えるりゅーてぃの第5ターン。りゅーてぃは意を決して場のクリーチャーを横向きに倒しながら宣言した。

 

「ミスった俺が悪い……ッ! プレイヤー!」

 

「殴ってこないでほしいなぁ……!」

 

わかりきってはいたが、といった調子で苦笑しながらシールドブレイクの処理を行うS.S。

軍師に命じられるまま次善の策を実行するクリーチャーの大群を前に、ここまで不敗を誇ってきた若侍の守りはなす術なく全て突破され、ついに膝を屈したのであった。

 

S.S 1-1 りゅーてぃ

 

 

前日のDMGP9th、そしてこの日の東海CS。S.Sとりゅーてぃの2人はその両方に参加している。すでに数多くの試合をこなしてきた彼ら2人の疲労は察するに余りある。その極限状態の中でついに訪れた思考の破綻、それは誰しも平等に襲いかかる。S.Sとりゅーてぃが人間である限り、逃れることはできない。ただ、どこまで抗えるかだ。

 

結果的に勝利をもぎ取ったことで頭が冷えたのか、りゅーてぃの目は据わっている。3本目にもつれ込ませることはできた。やることは昨日のGPからずっと変わらない。自分の戦いをするだけだ。

今日初めての敗北を味わったS.Sもまた、デッキシャッフルを行う手に力が籠もる。流石にここでやすやすと勝たせてくれるほど、東海CSは、りゅーてぃは甘くない。

 

無双の侍、S.Sか。

老練の軍師、りゅーてぃか。

 

準決勝を制し、魔物を御し、決勝のテーブルにつく者はどちらなのか。

運命はこの3本目に委ねられた。

 

 

先攻はS.Sだが、先に動いたのはりゅーてぃだった。

後攻第1ターン、りゅーてぃは《トレジャー・マップ》を使用。《カラフル・ナスオ》を手札に加える。ここまで2ターン目スタートがほとんどだったりゅーてぃだが、ここへ来て意表を突く1ターン目からの動き。

 

だが、S.Sは動じない。《フェアリー・ライフ》をキャスト、マナを3に伸ばして突き放す。

りゅーてぃは後攻第2ターンでさらに動く。マナに《BAKUOOON・ミッツァイル》を置くと、《レッツ・ゴイチゴ》を放ってマナは3。やすやすとS.Sのマナブーストに追いつく。さらに投下するのは2枚目の《トレジャー・マップ》。ここへ来てりゅーてぃのデッキは大きく回転していた。手札に加えたのは《侵革目パラスラプト》。第3,第4ターンの動きが一気に固まっていく。

 

S.Sの第3ターン、ここは決定的なパーツを拾いに行きたい。4マナを倒して《知識と流転と時空の決断》をプレイ。効果宣言はどちらもドローだ。りゅーてぃが大きく動くであろう第4ターンに向けた構えを見せる。

 

りゅーてぃの第3ターン、やはり投下される《カラフル・ナスオ》。墓地に4枚のクリーチャーを落としていく。次のターン、S.Sが動かなければ、最悪の場合ゲームエンドまで動かれてしまうことは必定だ。

 

果たして、運命を分けるS.Sの第4ターン。

S.Sは力強く3マナをタップ、大きく深呼吸。《本日のラッキーナンバー!》をプレイする。宣言は当然「5」。りゅーてぃ、しかしここで動じることはなかった。彼には次善の策があったからだ。

 

軍師りゅーてぃが用意した次善の策への布石。それはりゅーてぃの第4ターンに姿を現した。献策を受けてりゅーてぃの手札から飛び出したのは《バングリッドX7》。

 

りゅーてぃは、次のターンに《Waveウェイブ》もしくは《本日のラッキーナンバー!》2枚目によって、再度5コストのクリーチャー及び呪文が止められるであろうことを予見していた。そのために、《バングリッドX7》でマナの《BAKUOOON・ミッツァイル》を呼び出す構えを取ったのだ。次のターンに2体以上のクリーチャーを用意した上で《BAKUOOON・ミッツァイル》を出せば致死打点が揃う。そうでなくとも、召喚以外の方法──例えば、《マリゴルドIII》などの効果を使用すれば、《侵革目パラスラプト》や《バロン・ゴーヤマ》といったクリーチャーを出し、さらなるアクションにつなげることができる。

軍師りゅーてぃの油断ならない策を突破しない限り、S.Sは絶体絶命のピンチから逃れられない。

 

S.Sの第5ターン。《Waveウェイブ》を出し、墓地から《本日のラッキーナンバー!》をキャスト。再度の5を宣言するも、りゅーてぃはわかりきっていたとばかりに泰然とした様子を崩さない。呪文を唱えたことで《Waveウェイブ》がGR召喚を行う。ここで登場したのは《ダダダチッコ・ダッチー》。アンタップマナは赤の1枚だが、S.Sのバトルゾーンは次に出てくるクリーチャーを含めても3体。この状態では《BAKUOOON・ミッツァイル》は出ない。デッキトップの《音精 ラフルル》が出てきたところで、今回は十全に仕事をしないのだ。

 

だが、《ダダダチッコ・ダッチー》によって呼び出されてしまったカードは、誰もが予想打にしない、しかしこの局面において最高の働きをする、言わば「領域外の刺客」であった。

 

その名は、《機術師ディール》。下の《本日のラッキーナンバー!》が使用されるため忘れられがちだが、彼自身は6コストのクリーチャー。そしてその効果は、「宣言したコストのクリーチャーを全て手札に戻す」。

 

りゅーてぃはここへ来て顔色を変える。りゅーてぃの盤面に存在する《カラフル・ナスオ》と《バングリッドX7》。彼らの、コストは。

 

「宣言は『4』!」

 

高らかに宣言するS.Sの声、それは決勝卓に上がるためのウォークライ。りゅーてぃは呆然と2体のクリーチャーを手札に戻す。《機術師ディール》、それはまさにこの場においてたった一人のジョーカー。

りゅーてぃの前からクリーチャーが消えた。策は、ディールが起こした奇跡、否、「機術」に破れた。

 

それでもりゅーてぃは諦めない。バウンスされた《バングリッドX7》を再召喚。「ダダダチッコ・ダッチー》を処理して打点を減らす。殴り返しでこの《バングリッドX7》は沈むだろう。だが、それでも。諦めたくはない。りゅーてぃ、満身創痍でありながらもその目は未だ前を見ている。

 

しかし、S.Sのステージは終わらない。第6ターン、2体目の《Waveウェイブ》が投下。もちろん《本日のラッキーナンバー!》を墓地から使用。5をいま一度宣言し、2体の《Waveウェイブ》によって2回のGR召喚。現れたのは《マリゴルドIII》と《ロッキーロック》。《マリゴルドIII》のマナドライブによって、マナから飛び出すのは《DROROOON・バックラスター》。その効果でさらなるGR召喚が行われ、《“魔神轟怒”ブランド》が盤面に着地する。次のターンの打点を万全に備えて、ターンを返す。

 

りゅーてぃ、最後の足掻きとして《カラフル・ナスオ》と《ラ・ズーネヨマ・パンツァー》をプレイ。打点はすでに大量に形成されている。それでも出来ることをやるだけだ。

 

S.S、ついに全ての打点をぶつける時が来た。手札から《本日のラッキーナンバー!》がプレイされる。宣言は、りゅーてぃの場に見えていたシールドトリガー呪文・《リーフストーム・トラップ》の「4」。

 

万策尽きたりゅーてぃ、ついにS.Sのクリーチャーの一斉攻撃の前に沈んでしまった。

 

「ディールが出てきたせいで計算全部狂った……!」

 

りゅーてぃは盤面を片付けながら、絞り出すように悔しさを吐露する。軍師、あと一歩及ばず。

 

魔物を御し、策を全て突破し、勝利を掴んだ男。その名はS.S。

愛知の勇敢なる侍が、ついにこの東海CSの最終決戦に臨む。

 

S.S 2-1 りゅーてぃ

 

準決勝 勝者──S.S。